第163回直木賞受賞作である、著者:馳星周 氏「少年と犬」について読了しましたので、レビューを記事にいたします。
(映画化については公式HPリンク/こちら

〈あらすじ〉

 『少年と犬』は、163回の直木賞を受賞した作品であり、東日本大震災で飼い主を失った犬「多聞」と、その犬に関わる人々の物語を描いた連作短編集です。この作品は、馳星周氏の犬への深い愛情と、人間の弱さや優しさを描き出すことに成功しています。

 犬の人間に対する無限の愛情と信頼に、心が打たれます。動物って尊いなって心が洗われる感じがしました。

〈著者さんについて〉

 著者の馳星周氏は、他にも『不夜城』や『漂流街』など、ノワール小説の名手として知られています。読書上級者の皆さんからは、馳星周さんの作品は、社会の暗部を描きつつも、人間の温かさを忘れない独特のスタイルが特徴とされているようです。

 最新作は『北辰の門』で、平安時代を舞台に、疫病により多くの為政者が命を落とした朝堂において、ひとり異彩を放つ者がいた。藤原仲麻呂・・・と、導入だけでも面白そうな話であることが想像されます。管理人は未読ですが今後読んでみたいと思います。

【要注意(ちょっとだけネタバレあり)】〈各章のあらすじ〉

①男と犬

 仙台市を舞台に、窃盗団に手を貸す和正と犬「多聞」が出会う物語です。和正は、認知症の母とその世話をする姉のために、危険な仕事を引き受けます。多聞は和正にとって守り神のような存在となりますが、多聞は常に南を向いていることから、彼が何かを求めていることが示唆されます。

②泥棒と犬

 窃盗団の一員であるミゲルが、多聞と共に新潟県に向けて逃走する物語です。ミゲルは過酷な過去を持ち、多聞との出会いが彼にとっての救いとなります。しかし、多聞が南に行きたがっていることを感じ取ったミゲルは、多聞を自由にします。

③夫婦と犬

 富山県に住む中山夫婦が多聞を拾う物語です。夫婦はそれぞれ異なる名前で多聞を呼び、多聞は夫婦にとって心の支えとなります。この章では、夫婦の関係性や、多聞がもたらす影響が描かれています。

④娼婦と犬

 滋賀県で娼婦の美羽が多聞を拾う物語です。美羽はギャンブラーの晴哉のために風俗店で働き、多聞は彼女を危険から守ろうとします。美羽は多聞の存在によって心の平穏を得ますが、多聞が西へ行きたがっていることを知り、彼を自由にします。

⑤老人と犬

 島根県で猟師を営む弥一が多聞を拾う物語です。弥一は末期の病に侵されており、多聞は彼の孤独を癒やします。弥一は多聞が自分を看取るためにやって来たと信じます。

⑥少年と犬

 熊本県に住む内村家が多聞を拾い、家族で飼うことを決める物語です。内村家の息子・光は震災のトラウマから心を閉ざしていましたが、多聞との出会いが彼の心を開くきっかけとなります。

 上記全6章の短編から成り立ち、最後に全ての物語が繋がるという構成です。1章ごとに簡潔もしますので、一気に読み切らなくても全く問題ありません。

〈管理人の感想〉

 もともと、犬・ネコ・馬なんかの動物は太古の昔から人間の友達、パートナーだったと思います。なかでも特に犬は世界中で広く飼われていた、人間と最も心通じた動物だったと管理人は考えています。そんな中でこの作品については、人間に対する犬の無償の・無限の・愛情と信頼を思わせる作品です。

 当然犬は会話できませんので、犬の正しい心理描写はありませんが(当たり前ですけど)、そこに読者の想像が膨らみます。各章ごとに関わる人間が心に秘めた「悲しい部分」を無償の・無限の・愛情と信頼で癒やしていく様は、読者誰もが共感してしまうのでないでしょうか。

 管理人はネコ好きですが、犬も大好きになり飼ってみたくなりました。本当に心が温まる、悲しい気持ちのときに読みたくなる作品です。動物大好き!!ってなると思います。

〈映画化について〉

 本作品は、来年2025年春に主演:高橋文哉さん、西野七瀬さんで映画化が決まっています。(公式プレスリリースはこちら
 きっと素晴らしい作品になると思いますので、必見ですね。

最後までご覧いただきありがとうございました。ではまた。

 

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投稿者

管理人ねこ

30代会社員。2020年4月頃にFIREという考え方を知り、目指し始めました。 これまでの軌跡、これからの軌跡をメインに綴りたいと思いブログ開設いたしました。まわりみちが多くなると思いますが、気長にやっていきたいと思います。

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